SSブログ
読書感想交換会 ブログトップ
- | 次の10件

H31 1/26 第32回福井読書感想交換会レポート(東京奇譚集 ハナレイ・ベイ) [読書感想交換会]

 「星を読む会」主催、第32回福井読書感想交換会は平成31年1月26日(土)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。

今回の課題図書は、村上春樹著「東京奇譚集」(新潮文庫)の一編「ハナレイ・ベイ」を取り上げました。
 会員の皆様からの感想は以下の通りです。

●村上春樹っぽくない。なんで映像化されたんだろう。村上春樹というネームバリューか?
●村上春樹には、「本」という媒体が
やはり一番似合っていると思う。
●なんで息子の死んだ場所に何度も通ったのか? それが理解できなかった。親子関係の希薄さかなと。

●高校時代に一度読んでいた。全部は読んでいないが「ハナレイ・ベイ」は印象深く残っていた。
 お母さんが息子のことを人間のクズだと言っていたが、高校時代は「そこまで言うな!」と思った。
 自分が子供が出来てから読んでみると気持ちが変わって、主人公の気持ちがわかる。
 しかし人間的には好きじゃないな、と。

●なんとなくおしゃれな感じがする。つかみどころがない。読後感がさらーっとした感じ。
●母と息子の親子の物語!という感じはしない。
●物足りない。
●女性が主人公なんだなと思った。長編では女性主人公というのはない。
●文章は村上春樹。風をすり抜けるとかそういう感情がないので、欲求不満。
●このお母さんは村上春樹にしか書けないな。
●他の短編でも、読後感が良いものがあ
ったけど、ハナレイ・ベイは唯一、何も残らなかった。
●オシャレという話を聞いたが、ハナレイ・ベイもオシャレ。読後感が残らなかった。
●サチさんが泣くところが印象に残った。
●これを映画化しようと思った理由があるんだろうと思う。
●村上春樹は「ノルウェーの森」から。ベストセラーというものを読んだことがない。
●日本の近代文学が好き。
●性描写がひどくて、ベストセラー足りうる理由がわからなかった。
●「ダンス・ダンス・ダンス」も読んだが、ベストセラーの理由がわからなかった。
●20年経って村上春樹を読むと、当時分からなかった男女の機微も分かり、トレンディドラマで素敵な生活とはどんなものか夢見ることもできるようになった。
●ハードカバーは装丁が美しい
●映画のイメージが非常に強く湧き出てくる物語が面白かった
●潔癖な感じとか、すぐシャワー浴びるところとか、理解はできないけど、愛しく思える。
●村上春樹は、読んだ本によって雰囲気が変わる。
●ハルキストとはなにか? 全部の作品が好きだというのは違和感があるのでは?
●オシャレをトレンディドラマのように伝えるところ。
●ハルキストとは、そういったトレンドを伝えるところの教科書にするのがハルキストでは?
●村上春樹の本を読んだこと自体がトレンド足りうる。
●村上春樹が早稲田に原稿を寄贈したというニュースから、早稲田に対して
想いを持っている人なんだと驚いた。

感想交換会の後の会員からのおススメ本をまとめてみました。

●永井三郎「スメルズライクグリーンスピリット」(ふゅーじょんぷろだくと)
 マンガ。少年の悩みをコミカルに書いているので、ぜひ男性にも読んで欲しい!
 思春期のときの閉塞感、アイデンティティの模索とか、そういうものが面白い。

●宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」(祥伝社)
 マンガ、アニメ、映画

●森本梢子「アシガール」(集英社)
 マンガ、小説、ドラマ

●三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」(メディアワークス文庫)
 黒木華さんが好きだからドラマ見て、本を読んだ。

参加された会員の皆様、お疲れ様でした。


次回33回福井読書感想交換会は、平成31年3月27日(水)19:00から21:00まで。

課題図書は、原田マハ著「暗幕のゲルニカ」(新潮文庫)を取り上げます。

会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室
ニホ」で行います。
飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。

nice!(0)  コメント(0) 

H30 11/17 第31回福井読書感想交換会レポート(悟浄出立、悟浄出世) [読書感想交換会]

 「星を読む会」主催、第31回福井読書感想交換会は平成30年11月17日(土)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。初の土曜日開催です。
 今回の課題図書は、万城目学著「悟浄出立」、中島敦著「悟浄出世」の2作品でした。
  土曜日、女性陣は忙しいのか男ばかりの読書会となりましたが、紅一点が来たところで会の皆さんそれぞれの感想をお聞きしました。

1.悟浄出世、悟浄出立、悟浄歎異の順で読んだ。万城目学の出世では、三蔵法師から見た悟浄がいろいろ悩んでいて、出立で一歩踏み出すという印象。歎異でいろいろと動こうかなとなった。中嶋敦が書ききれなかった部分を万城目学が書いた、という印象が良かった。

2.「悟浄出立」から「悟浄出世」の順に読んだ。
 中嶋敦は文章中の格言に深みがある。
 万城目学は、文章の泉の深さが感じられず。出立から出世に至る経緯がわかったので深みを持たせられるのが、さらっと読めてしまったのがちょっと残念だった。もう一回読みたいのは中嶋敦版。中島敦がもっと長生きしていれば続きを書いていただろう、と思うと残念。

3.「悟浄歎異」が一番面白いと思った。悟浄の眼から見た人物評が描かれているが、「悟浄が問題を解決できる人」とは違うと思った。「悟浄出立」に相当する作品をかけたのに、早逝されたのが残念。


4.万城目学の方を先に読んだ。プリンセストヨトミを読んだことがある。この本の感想を言えと言われてもつまらない。
 中嶋敦を読んだら、難しいことが書いてあるが読みこんでいくと面白いなぁと思う。経過が大事だということが大切なところが読み比べるべき点かと思った。

5.中嶋敦版はあらすじを読んで辛いと思ったので読んでない。
 万城目学版を読んだ。万城目学版は悟浄から見た八戒、悟空の話。戦争は指揮官の精神を折ることだというところや、ラストで一行の先頭を悟浄が歩き、どうやって道を決めているのかと孫悟空に尋ねるシーンが共感できた。

6.万城目学版から読んだあとに、中嶋敦版を読んだ。あまりにも中嶋敦版が良かったので、「悟浄出立」の内容を忘れてしまった。
 「悟浄出世」の中で、人を食べていないはずの悟浄が、自分とは何かを考える病にかかるのが『「アルジャーノンに花束を」風に言えば』ご都合主義のような気がして引っかかった。しかし、悟浄が自分とは何かと悩みながら苦悩している姿に自分を重ねた。
 妖怪はあまり考えないものだが、人を食うことで自分とは何かを悩む病に侵されることがある。この病を人と妖怪という超人間的な存在を分ける境界として中嶋敦は描いた気がした。

7.「悟浄出世」、「悟浄出立」の順に読んだ。
沙悟浄が元神様だったのがびっくりした。
 猪八戒のイメージは「怠惰なブタ」だったので、天界で活躍した軍師だったとは思わなかった。
 西遊記に興味を持った

8.万城目学「悟浄出世」から読んだ。昔見たアニメのエピソードの一つくらいに感じた。
 読了感として、頭が良くなったかな?感が無かった。沙悟浄である必然性がなかったように感じる。キャラクターがあまり立っていないのでは?

 皆さんの感想のあとに、一般的な宗教者による西遊記の簡単な解説。

☆西方浄土:インドから見て西に極楽浄土があると言われている。東が「地獄」なのは太陽が地獄だから。 夕方から夜が一番良い時間。夕方から夜が一番良い時間帯だから。

☆三蔵:経蔵、律蔵、論蔵のことを指し、仏教の典籍の総称。または僧官の1つ。北周(556ー581年)に制定された。地方にも置かれる。三蔵に精通した人を指す言葉としても。

☆三蔵玄奘
 俗名、陳ネ韋(ちんい)
 629年に陸路でインドに向かい645年に教典657部・仏像を持って帰国
 大般若経(大般若波羅密多経)、般若心経(般若波羅密多心経)
西遊記の登場人物として、前世は釈迦の二番弟子「金蝉子こんぜんし」であったが説法を聴かず教えを軽んじたため、東土に転生した。

☆寒蝉敗柳に鳴き
  寒蝉 秋になく蝉、ひぐらし 勢いを失った様子を表す
  敗柳 枯れた柳 すでに色香が終わった様

☆天上界‐玉帝が住んでいる
☆霊霄殿‐玉帝の宮殿
☆玉帝‐高上玉皇大帝 中国道教の最高神 天界、宇宙、地上、地底の支配者

☆捲簾大将
 簾(すだれ)を捲(まく)る程、玉帝を近くで警備警護する大将
 近衛大将、近従、警視庁警備部部長

☆河伯‐河の妖怪
☆因果‐原因と結果。すべての行為は後の運命を決定するという業(カルマ)論
☆直綴‐じきとつ 法衣の一種
☆形而上学‐現像界の奥にある世界の根本原理を探求する学問

☆秦時の車度轢金賛
 秦の始皇帝を狙った張良の暗殺未遂事件?
 120斤(30kg)の鉄錐を巡幸中の始皇帝の車を狙って投げつけた暗殺未遂事件
 張良は後の劉邦の軍師となる人物

☆大椿の寿
 大椿之寿-長く生きることの例え
 大椿は伝説上の大木。大木の8000年を四季に例え、32000年を一年に例える。
  (出典:壮子)

☆朝菌の夭
朝菌は晦朔を知らず-朝生えて晩には枯れるキノコは晦日(みそか)と朔日(ついたち)を知らない。寿命の短い、はかない物の例え

☆大広袤‐広は東西、袤は南北の長さ。広さ、面積を表す
☆翻然大悟‐翻然-急に心を改める様
☆大活現前-大死一番、大活現前 死ぬ気になってかかればそこに道が開かれる(禅宗)
☆蘭麝 蘭の花と麝香の香り
☆瓔珞 宝石を連ねて編んだ飾り

☆頂に肉髻あり、円光
 仏の身体的特長を表す、三十二相八十種好の一つ。
 32の特長、80の微細な特長。
  *頂髻相(ちょうけいそう)ー頭頂の肉が盛り上がり髻(もとどり)の形をしている。
  *丈光相-体から一丈の光明を放っている。後光、光背、円光はこれを指す。
   それぞれ仏画、仏像を描くときの参考になっている。

☆托塔天王-毘沙門天(持国天、増長天、広目天と共に四天王の一尊で武神)
 水滸伝の晁蓋(ちょうがい)は托塔天王の転生とみる説もある

☆木叉恵岸-観音菩薩の弟子、ナタ太子の兄、西遊記に登場する人物

☆観世音菩薩摩「言可」薩-観音さん
 菩薩:仏、如来の次の位。自ら悟りを求める一方、衆生を導く行者
 菩薩薩摩「言可」薩:サンスクリット語でボーディーマハーサットヴァ
 般若経の用語、菩薩(覚りを求める衆生)+まかさつ(偉大な衆生)

●観音菩薩を表す語としての「観自在菩薩」は玄奘三蔵の訳。サン語でアヴァローキテーシュヴァラ「自由にみることができる」との意であり、訳語として正しいと鳩摩羅什(くまらじゅう)らの旧訳について、「観世音菩薩」を批判した。

☆夜叉-サン語でパーリ、薬叉とも。インドにおける鬼神の総称
 ケンダツバ:サン語でガンダルバ。帝釈天に仕える音楽神。お香(ガンダ)を食べて生きるとも。ケンタウロスとの関係も。

☆カルラ-インド神話の神鳥ガルーラ
☆キンナラ-インド神話の音楽の神々や精霊
☆マゴラカ-サン語でマホーラガー。マハー+ウラガで大いなる蛇を表す
☆(天竜)八部衆-インド神話における鬼神、戦闘神、音楽神、動物神が仏教に帰依し護法善神となった

☆みそなわす-「見る」の尊敬語。ご覧になる。
☆得度-覚りの世界に渡る(度)こと。出家して授戒すること。
☆梵音-サンスクリット語のこと。ここでは心地よい仏の言葉の音。
☆世尊-お釈迦さんのこと。
☆阿羅漢-サン語でアラハント。尊敬されるべき修行者。少林寺の修行僧
☆びゃく支仏-菩薩の下の位。声聞(しょうもん)の上の位の修行者。

☆正観を得れば浄業たちどころに成る
 正しい観方(覚り)ができれば業がたちまち清まる
☆心相るい劣ー心が弱く劣っていること
☆三途無量‐
 三途-三悪道「地獄、餓鬼、畜生」の苦しみの世界のこと。
 渡りやすく沈みやすいため、川にたとえられる

☆倫命-天子や天皇の命令。倫旨とも
☆大雷音寺-史実で玄奘三蔵が赴いたのはナーランダ大僧院

●香[けものへん+章]
 シカ科の動物、ジャコウジカ?
 [けものへん+章]の読みは「のろ」

●八百丈:2.4km 1丈=3.03m
●角宿:かくしゅく、かくしゅう。東 乙女座
●心宿:しんしゅく 和名、中子星。さそり座
●二十八宿:古代中国での赤道近くの正座の区分。28のエリアに不均等分割したもの。
●目に一丁字のない:ひとつの字も知らない、無学
●太上老君:老子が神格化されたもの。道教の最高神格の三清の一つ。道徳天尊、混元老君とも。
●八卦炉:太上老君が仙丹(仙人の薬)を練るときに使う
●泰山圧頂の法:三山で相手を押しつぶす法術
●泰山:山東省泰安市にある山。封禅(ほうぜん)-帝王が天と地に王の即位を知らせる儀式-を行う山、道教の五大聖山の一つ
●須弥山:サン語で「シュメール」「スメール」。古代インドの世界観で中心にそびえる山
●峨眉山:四川省にある山。芥川竜之介著「杜子春」にも名が見える。道教、仏教の聖山。
●小雷音寺の黄眉老仏-ミロク菩薩の元弟子「黄眉童子」。ミロク菩薩の宝物を持ち逃げしていた。
●金鐃:きんにょう。鈴。鳴り物
●釈迦如来:釈迦牟尼仏とも。釈迦、ゴータマ・シッダッタ、ガウタマ・シッダールタを仏(仏陀)として敬う呼び名。如来とは、如(真理)に従って来た者の意。サン語ではタターガタ。この上ない、と訳され「無上上」とも。大日如来、釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来など

●藕糸歩雲:藕糸は蓮の茎や根の繊維。蓮の糸
 歩雲履(ほうんり)は靴下と足袋が一緒になったような見栄えの靴。
 「藕糸歩雲の履」は北海黒竜王から奪った武具の一つ。

●鎖子黄金の甲:黄金でできた鎖帷子。
一万三千五百斤:8100kg 1斤=600g

●蟠桃会:すべての元凶。天界最高位の女仙「西王母」の誕生日会(3/3:陰の気が強くなる時期)。神仙が蟠桃(サターンピーチ、ドーナッツピーチを指す)を食すだけの会。
西王母の蟠桃園には3600本の桃の木があり、手前の1200本は3000年に一度熟しこれを食べると仙人になれる。中程の1200本は6000年に一度熟し食すと長生不老が得られる。奥の1200本は9000年に一度熟し食すと天地のあらん限り生きながらえることができる。
悟空はこの桃を複数個食べた。

●三十六員の雷将:三十六天将か?
道教において陽数の代表3と陰数の代表6の関係を多いに持つ数字36。3の倍数6を6でかけたもの(6の2乗)陰陽の代表である6と9の最小公倍数。兵法三十六計に始まり、三十六歌仙、富嶽三十六景、36協定など色々なところで登場する縁起の良い数字である。

●祐聖真君:玄天上帝、真武大帝、北極佑聖真君とも。七星剣を持ち、足下に亀と蛇をふみつける。

●迦葉(かしょう)-「十大弟子」の一人。釈迦の3番目の弟子。摩訶迦葉、大迦葉とも。頭陀(ずだ:煩悩を取り除くこと、またはそのための修行)第一と言われた。釈迦入滅後は教団をとりまとめた。

●阿難(あなん):「十大弟子」の一人。多聞第一と言われた。釈迦の従弟で、釈迦と教団に違反した悪人ダイバダッタの弟と言われる。

●東勝神州傲来国華果山:東の神州、海を越えた壮大なる「もの(台風、太陽)」が来る方角。
日本、琉球、台湾、フィリピンのどれか。
 孫悟空の出生の地。孫悟空は暴風雨に例えられたか?

●1里=3.927km 10万8千里=42万4千km
 80万里=320万km 30万里=120万km
 赤道一周=4万km

●斉天大聖到此一遊=天にも斉(ひと)しい大聖様がここに到って一遊び

●オンマニハツメイウン
 Om Mani Padme Hum オム・マニ・ペメ・フム
 おお、蓮華の中の宝珠よ
 マニ車にかかれている真言:六字大明呪
 観自在菩薩の慈悲を表した真言

●五行山:ベトナム ダナンにある。全体が大理石でできていてマーブル・マウンテンと呼ばれている。

☆東西南北で色が決まっている。北は黒、東は青、南は赤、西は白。道教思想より。

 簡単な道教の解説に始まり、孫悟空の出生地の話、桃太郎の話に及ぶに至り、会長の一人語りでほぼほぼ時間を使ってしまい感想の交換に到らなかったような気がします。反省しきり。
 本日はここで時間となり、読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。


 次回32回福井読書感想交換会は、平成31年1月26日(土)19:00から21:00まで。
 会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

 課題図書は、村上春樹著「東京奇譚集」(新潮文庫)より「ハナレイ・ベイ」を取り上げます。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

H30 9/26 第30回福井読書感想交換会レポート(アルジャーノンに花束を) [読書感想交換会]

「星を読む会」主催、第30回福井読書感想交換会は平成30年9月26日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
今回の課題図書は、ダニエル・キース「アルジャーノンに花束を」でした。
本作が大好き!という、ミステリー大好きな新メンバーも飛び入り参加し、また、古参メンバーから「外国文学は馴染みがなく、小説とお笑いは日本に限る!」という、メンバー大爆笑の名言も飛び出し、まったり進行のなか、和気あいあいと会が始まりました。

それではまず、会の皆さん一人ずつから読後の感想をお聞きしていきましょう。

1さん
読み始めの段階では、チャーリーの知能が低い状態で、平仮名が多く句読点もなく、文章が非常に読みづらい。
彼らと接するには、忍耐が必要で、家族や社会から偏見の目に晒されているということを感じた。アルジャーノンの死によってチャーリーは自分の運命を悟り、ウォレンという障害者施設へ自分から赴くという判断をしたが、それは「高い知能の世界を知った」からの判断。
最も重要だと感じたのは、賢さと幸福度は比例しないということ。人間関係の軋轢は、社会的理解が広くなった現代でさえ、知的障害者のみならず、発達障害者や鬱病患者、性的マイノリティーの人たちは社会から隔離されていると感じる。100年前だったらもっと生き難くく、どうしていたのだろうか。

2さん
割と好意的に読む事ができた。印象的だったのは、最初と最後で、誤字脱字を多用していることに気が付いた。最初の方は読みづらさから、読み飛ばしていたが、最後が近付くにつれ、一文字も逃さずに意味を捉えようとしていて、誤字脱字の文章をあまり真剣に読まなかったのは、自分も障碍者の方に対して、多少なりとも偏見があったからなのかもしれない、と気が付いた。
実際には死んでいないけれど、徐々に人が死んでいく描写のリアルさに心を打たれた。
クリスチャンの自分としては、チャーリーが手術を受ける前後でも、信仰を持っていた、という事に興味を持った。

3さん
この作品を最初に読んだのは、中学生の頃で、当時は「幸せとは普遍的なものである」という、教訓的な物語として捉えていた。そして、文体が「経過報告」という形だったため「ドキュメンタリー」のような印象を持った。
人間が何十年という時間のなかで、成し遂げることを、チャーリーは数カ月で成し遂げた。しかし、考えるという行動の尊厳には、ある程度の知能が必要だ。最後に、アルジャーノンへ花束を贈ってくれという情緒の由来は、彼が得た人間への尊厳であり、それは手術を受けなければ得られなかったものだ。チャーリーは、手術を受ける前も、人間だったと思う。かつての自分は、手術をしないで知的障碍者のまま、一生を終えた方が幸せだったのかも、と思ったが、今は、手術を受けて良かったな、と感じている。

4さん
人生とは上り坂と下り坂であり、チャーリーは知らなくてもいい事を知ったことになると思った。昔の自分に対する周りの扱いがどういう類のものだったのかという事を、賢くなることで理解した時の辛さなどが、特にそうだ。ニューヨークで、チャーリーとアルジャーノンが逃げた時、もう研究室に戻らなくても良かったのではないかと思った。
悲しかったのは、後半の下り坂の所で、自分が朽ちていくということが分かっていたから、好きな人(アリス)と会うのを止めてしまったところ。
最終的に知能は元に戻ってしまうが、最後の一説「アルジャーノンに花束を贈って欲しい」という部分では、チャーリーにとってアルジャーノンとは、賢くなりたいと願う自分自身と戦った、戦友同士であると感じた。

5さん
人としての在り方を問う作品であると感じた。チャーリーの最初の願いは、みんなから好かれたいから賢くなりたいということだったが、知性の獲得と共に、知らなくてもいいことを知り、どんどん孤独になってしまった事が悲しかった。人にとって一番重要な事は、知能が高い事ではなく、優しさや思いやり。
そしてチャーリーの知性の獲得と「攻殻機動隊」のタチコマのゴーストの獲得が似ていると感じた。もしかしたら、本作へのオマージュなのかもしれない。

6さん
本を全部読む事が出来なかった。
前半部分の、ひらがなだけの、句読点がない文体の読みづらさで挫折してしまった。それでも頑張って、後半まで読んだ。
以前ドラマ化したものを見て、昔も一度この作品を読もうとしたが、今回と同じ理由で挫折し、読めなかった。

7さん
一番の感想は悲しい話、ということ。物語の最後の方、キニアン先生の教室に間違って会いに行ってまったことがきっかけで、自ら養護施設へ行くという決断をしたところが特に悲しかった。本作の最初の方に「教養が人と人の間に楔を打ち込む可能性がある」と書かれているが、チャーリーは頭が良くなってからはずっと嫌な奴として描かれている感じがした。親に愛されたい、仲間と仲良くしたいという、本来チャーリーがやりたかったことは実現出来ていないし、両親と対面した時も、頭のいい人間として振るまえていない。チャーリーは頭が良くなり感情が豊かになったが、感情に振り回されて周りにも悪影響をもたらしてしまった。急激に頭が良くなったことで、本来ならば年齢と共に徐々に身に付いていくであろう寛容さを身につける時間がなかったのではないだろうか。

8さん
元々この本がすごく好きで、読書会で取り上げてもらってすごく嬉しいと感じている。20代になって初めて読んだが、50年前に書かれた本とは思えないぐらい、虐待や精神病の事に対する考え方が、現代的だと感じた。
チャーリーは一体どうしたら良かったのか?という事をずっと疑問に思っていて、答えは、未だにわからない。この作品への疑問点は、
・人間は優しさを持ったまま賢くなることはできないのか。
・なぜ優しさを持ったまま成長できなかったのか。
ということ。
知恵と幸福度は比例するが、賢くなると、幸福などが感じられない寂しいことになり、人間は結局寂しいままなのだろうか、と感じた。

9さん
この本を選んだ理由は、自分自身もずっと持っていたが、読めていない作品だったから。自分は、知的障碍者の施設で10年以上働いている。自分が登場人物の一人になったような感じがした。
この業界では、知的障碍者と接する仕事をしている人は読んでおくべき一冊といわれている。
この作品に対して特に不思議に感じたことは、ダニエル・キースがなぜ障碍を持った人の立場に立った本を書けたのか、ということ。「見る」ということと「書く」ということでは、視点がまったく違う。もしかしたら、身近に障害を持った人がいたのでは?と感じた。
頭が良くなったら、以前のままの方がよかったと思う、というのはひどく矛盾しているように思うが、その感情を小説として表現することは困難な事。素晴らしい作品だと感じた。


一通り、感想などを言い終えたあとは、それぞれの感想を踏まえ、もっと掘り下げたいところを話し合うため、フリートークへ移行します。そこでもこんな感想が飛び出しました。

・文体や人名がなかなか覚えられなかった。
・アリスのチャーリーに対する感情は恋愛感情なのか?
→読書会メンバーは、アリスは、チャーリーに対して恋愛感情はあったと認識していた。
・アリス=と表記されているときは、チャーリーが女性として見ていて、キニアン先生=と表記されているときは、恋愛感情はなし、と判断した。
・障碍者施設に勤めている自分の親にも本作を薦めた。彼らの気持ちが知れて良かった、と話していた。
・自分の身近に障碍を持った人がいないため、想像しただけでも辛い。
・障碍者に寄り添って生きることは、なかなか難しいと感じる。
・チャーリーの母親が、今まではチャーリーに一生懸命だったのに、妹が生まれたとたん、チャーリーを邪険に扱い出して、それが読んでいて辛かった。
・自分の兄が認知症で、認知症に人でさえ、周りにいることで、生活がまったく立ち行かなくなってしまう。

そしてこの後「知能を得ることは、果たして本当に幸福なのか?」というテーマで、意見交換が開かれました。

・生きていくための最低限の知能は必要。社会に出るための知能は大切。
・社会の中で、知的障碍の方の働く場所を作ろう、という動きが活発な施設もある。
・しかしその就職先でも、彼らがチャーリーのような扱いを受けていたのかな、と感じると辛い。
・知的障碍があることの問題点は、お金の管理が出来ないこと。
・過去に、お金を手に入れることで、夜遊びを覚えてしまったり、判断能力が乏しいために、妊娠・堕胎を繰り返していた人もいた。
・知的障碍者もグレーゾーンが存在している。=昔は、ちょっと変わった人で片付けられていたことが、今は障碍として、名前が付く。
・彼らが特別学級で授業を受けたり、社会へ出るためには、周囲の理解やサポートが必要。
・企業としては、軽度の障碍者を雇用する傾向にある。
・知的障碍者は療育手帳というものを持つことが出来る。

ここでメンバーから、こんなご意見も出ました。

7さん
障碍者の人の居場所が、社会には中々ないと僕は感じる。彼らが従事できる仕事がもっとあるといいのに。一歩外へ出ると、競争社会では、能力が平均より下回る人は活躍できない。知的・身体障碍者だけでなく、発達障碍の人などは、一見すると普通の人と変わりなく見えるが、みんなと一緒の仕事をする事が難しい傾向にある。何か特異な能力が発揮できればよいが、そうでない限り社会からは抹殺されてしまうように思う。今の社会は競争させる時代であるのが問題。100年前だったらそういう人たちには何らかの居場所があったが、今はそうではないく、それに対して、非常に不条理さを感じる。

そしてここで、読書会のリーダーからおすすめ本です!
「アルジャーノンに花束を」は、色々な派生作品が出ているようですが、そのうちの一つ、東野圭吾著「あるジーサンに線香を」です。
これは認知症バージョンで、コメディとして読めるので、とてもオススメです!
本作との違いを感じながら読んでみるのも良いですね♪

社会問題にまで発展した会は、ここでおしまいです!
1冊の本から、他のメンバーの方の見方、考え方、人生論まで勉強することが出来た、大変有意義な2時間でした。
参加された皆様、大変お疲れさまでした!

次回31回福井読書感想交換会は、平成30年11月17日(土曜日)19:00から21:00までの予定で開催します。
会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

次回は、万城目学著「悟浄出立」(新潮文庫)に収録の表題作作「悟浄出立」と種本の中島敦著「悟浄出世」(青空文庫など)を読み比べてみたいと思います。
中島敦著「悟浄歎異」も参考までに。
お気軽にご参加ください!

nice!(0)  コメント(0) 

H30 7/25 第29回福井読書感想交換会レポート(藪の中) [読書感想交換会]

L1090118.JPGKIMG0693-1536x864.JPG 「星を読む会」主催、第29回福井読書感想交換会は平成30年7月25日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。

 今回の課題図書は、芥川龍之介著「藪の中」、森見登美彦著「新釈走れメロス」に収録されている「藪の中」を読み比べてみました。
 まず、会の皆さん一人ずつから読後の感想をお聞きしました。

1さん
 芥川版は、読み込んでも真相が分からず、誰かが嘘をついているのか、誰を信じればつじつまがあうのか考えたが思いつかなかった。夫である武士を殺したのは誰か、突かれた刀を抜いたのは誰か謎が残る。
 森見版は、恋人を昔の恋人にいちゃいちゃさせる鵜山君の行為に共感できなかった。楽しくフランクに読むことができた。

2さん
 芥川版は、昔読んでよく覚えてなかった箇所がある。
 森見版は、鵜山と菜穂子は共依存のような関係だと思った。「映画」で繋がる仲は、映画が無くなったらどうなるのか。二人は愛情よりは映画撮影の技術で繋がっているので、経営者的目線でお互いを見ているよう。
 菜穂子の供述に嘘が多いように感じた。キスのタイミング、銀杏の発言、喧嘩の仲裁など。
 情緒不安定な人に見える。

3さん
 課題図書の共通点はあまり無く、一人語りと三角関係しか類似点が見られなかった。別の読み物として読んだ。
 芥川版はもやもやして終わった。森見版はまとまってる。
 どちらの作品も女性が嘘をついているように感じた。男性が損してる。
 女性側が自分がよく見えるように嘘をついているように見えた。

4さん
 二つの共通点は、嘘をついてること。
 芥川版を最初に読んだが、森見版がどうアレンジするか楽しみだった。読んでみたら、映画を題材にしていたので面白かった。
 嘘と本当が入り交じってる作品を読むと、日頃取り扱ってる刑事事件を思い、自分なりの真相を見つけたいと思う。
 そのために普段から行っていることは、時系列に証言を並べて証言者の属性を鑑みて、信用がおける供述から何が言えるかを考えていく。今回は時間がなく、供述を検討していない。時間があったらやりたい。

5さん
 どちらも誰かが嘘を言ってる。
 人は自分に都合が悪いことは無意識的にでも従ってしまう側面がよく出た作品だと思う。
 女性が感情的に嘘をついているように意図的に書かれているように感じた。

6さん
 二つの本で一緒だと感じた点に着目した。殺された夫と鵜山の目が冷たく蔑んだように女性を見ていた点。鵜山くんは嫉妬に燃えて脚本を書いたように感じた。

7さん
 芥川の藪の中は昔から持っていたが読んだのは最近。黒澤明の「羅生門」がここから題材を取ったことはよく知っていた。かわいい自分を守るために嘘をつく。
 会社勤務の経験から、客からのクレームに関連する情報を集めて矛盾する点を考えていく。お客さんを説得するためのストーリーを考える。

8さん
 芥川版は、時代もあるが男性主導で話が進んでいく感じがある。ウェブサイトなどでいろいろ読んでみた。多襄丸の自分の虚栄心、いいかっこしからあんな告白をしたのかと思う。
 夫は盗賊にやられてしまいカッコ悪くて死んでからも本当のことが言えないのか。
 森見版は、芥川版と違いわき役の人たちにも色々な意見があって面白かった。
 
 中々フリートークで感想が言いにくいとの感想を以前にいただいていたので、ホワイトボードと付箋、マジックを持ち込んで15分ほどのワークをしてみました。
 芥川版から「多襄丸、女、男のうさんくさい発言」があるかを付箋に書き出していただき、ホワイトボードに貼った物を基に皆さんで感想を交換していきました。
 この会では、勝ち気な女がすすり泣き、気を失うことに嘘の雰囲気を感じた方が多かったようです。
 男殺害の刀、短刀の在処に気がかりになる人も多数。殺害方法、ためらい傷の有無など専門家からの貴重なご意見もあり。その流れから女性に殺せるのか、という意見も。
 黒澤明の「羅生門」での一つの解釈も紹介され、個々人の感想が深化されたのではないでしょうか。ウィキペディアでの芥川竜之介の生い立ちも紹介し、当時の時代背景、男女の違いなども気になるところです。

 次に、森見版の読書感想を交換しました。登場人物の主観で証言が集まっていく話のなかで、「本当」の部分に焦点を当てて話をしていきました。映画の中のキスシーン、虹、映画が前評判ほどおもしろくなかった、映画が制作された、ことは真実前提で話が進みました。
 鵜山くんが長谷川菜穂子を好き、好きだから魅力的に撮れるのか、魅力的に撮ってくれるから鵜山くんが好き、という点がよく話されました。
 どちらからキスしたのか、という実行行為についての話題から三人の立ち位置の話に。
 最後は銀杏の葉っぱの謎が残りましたが、時間となってお開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

 次回30回福井読書感想交換会は、平成30年9月26日(水)19:00から21:00までの予定で開催します。
 会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

 取り上げる本は、ダニエル・キース著「アルジャーノンに花束を」(早川書房)を取り上げたいと思います。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。

KIMG0694-1920x1080.JPGL1090121.JPG
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

H30 5/17 第28回福井読書会レポート(羊と鋼の森)  [読書感想交換会]

 「星を読む会」主催、第28回読書感想交換会は平成30年5月17日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。

 今回の課題図書は、宮下奈都著「羊と鋼の森」。
 この作品は、2015年「キノベス!2016 第一位」、「王様のブランチ ブランチブックアワード2015大賞」、「第154回直木三十五賞」候補作、2016年「第13回本屋大賞」と名だたる賞の受賞歴があり万人が「面白い」と認めた作品と呼べるのではないでしょうか。
 知り合いの調律士から調律の勉強用に使うピアノのカットモデルを借りてきて、少々ピアノの基礎的な勉強をしてから、会の皆さん一人ずつから読後の感想をお聞きしました。

1さん
 宮下奈都の本は何冊か読んだ。一番感じたのは「空気感」。北海道を舞台にしているので寒さが伝わる。オススメのポイント。

2さん
 読後感としては、となりのトトロのような「悪い人が出てこない」「毒気がない」「俗っぽいところがない」雰囲気を感じた。さわやかな作品。
 読む分量もちょうどよくおもしろかった。
 本屋のサイン会で宮下奈都さんにお会いしたことがあり、小説家としての姿勢を主人公に投影しているように感じた。「あのまんまの方」。

3さん
 ちょっと難しかった。
 毒気がなく、さわやかで、キャラクターに悪い人がいないということはストーリーに波がないと感じた。読み進めるのが難しかった。
 繊細な表現が難しい。皆さんの感想を聴きたかった。
 最後「一万時間の…」が印象に残ってる。淡々としたストーリーの中で
奥行きを感じた。


4さん
 ピアノを表している、タイトルがよい。ピアノを羊と鋼でたとえることはすごいなぁ、と思った。
 大きな事件があるわけではない、日常が淡々と続くことが幸せ。
 人間が存在するためには、なにを幸せと思うか、自分が認められることが必要。「世界に許されている」という表現は、ピアノを調律することで世界とつながっていることを表していると感じた。
 多くの人は自分のことを認めてほしいと思って生きている。一人ではその「認めてほしい」という欲求は満たせない。
 世界と繋がることをテーマにしている良い作品と感じた。


5さん
 他会員から宮下奈都さんを勧められて読んでいる。宮下さんの書くキャラクターは自分に沈みすぎない。独白に近い書き方。重い文章になりがちな一人称が、そうならない書き方がしてある。
 気になる部分に付箋を貼ってある。「嫉妬はするより」主人公に深いバックボーンがなくさらって書いてある。
 起伏がないからこそ、いつでも読み返せるおもしろさがある。


6さん
 紹介されて読んでみたら大変面白かった。「起伏がない」という感想が多いが、自分の感情に入り易い文章の裏返しだと思う。
 自然の描写を詩的な書き方で書いてあるのが好き。
 Amazonのキンドルは後で振り返り易い機能があるので、読書の振り返りにはちょうど良い。
 キャラクターは作者の人格の一つだと思う。色んな宮下奈都がいる。

7さん
 宮下奈都作品は三冊目でどれも共鳴する部分があったが、この本は一番入りやすかった。
 自分の日常に縁のない職業、しかしそこにスポットライトを当てる慧眼。
 板鳥さんの調律でピアニストの夢をあきらめた秋野さんだが、そこで調律に魅せられる展開が良かった。板鳥と対照的な秋野さん。
 和音、由仁、外村の三人の関係がどうなるのか、もう少し見たかった。


8さん
 とてもさわやかで、透明感のある話だと思った。ゆっくりな成長ストーリーが良かった。主人公は先輩の話をメモして、できることをコツコツ、日々コツコツしている姿を働き始めた自分と比べながら読んでいた。
 事件やきっかけを境に成長するのではなく、日々のコツコツが成長させている。
 映画化が楽しみ。


9さん
 読んだ後に、和音ちゃんのピアノが聴いてみたいと思った。
 出てくる人たちがみんなすてきでさわやか。
 柳さんと外村くんとの会話が印象に残る。
 新聞配達の経験から、歩いているときにポストの位置が気になることがあったことを思い出した。

10さん
 宮下奈都作品ははじめて読んだ。さわやかで、実直で純粋な青年が一所懸命働いている。実際はゆがんでるが、小説だから脚色されている。
 作中出てくる原民喜の作品もすばらしい文章である。

11さん
 宮下奈都さんははじめて読んだ。きれいでさわやかな文章だと思う。
 原民喜の文章がよい。
 宮下奈都さんが主人公に似てるのではないか。
 「環境が変わる」ことよりも「環境が変わったことに気づく」ことの大事さを学んだ。
 これからの人生も考えたい。

12さん
 この作品で、ピアノの調律の奥深さを知った。
 小中学生向けに書いたような文体がつまらないと感じた。高校生が学校でピアノの調律を見ただけで調律師を目指すことや、双子の一人が調律師を目指すのは短絡的。
 主演女優がいない、主人公を支える存在がいない。
 本屋大賞でなかったら読んでいないと思う。

13さん
 ピアノの調律と自分の仕事が似ていると思った。最近ジレンマを抱えて仕事していたので、読んでいて泣けてきた。
 「あせらずコツコツと」という台詞から、代わってくれる誰かがいることが前提と考えた。代わってくれるだれかがいる幸せ。

 皆さんの感想のあとに、特に印象に残った箇所などについて話しました。

・先輩や後輩がいる職業と自分の代わりがいない職業
・自営業とサラリーマンの違い?
・調律の腕と営業の腕
・板鳥さんが飛行機に乗れていたら独立するのか?
・コンサート調律師なら飯食えるのか?
・武生国際音楽祭での調律師の動き
・作中のピアノメーカーは架空のもの
・作品の調律師の中で誰ならピアノを任せられるか?
・秋野さんなら、あきらめ、を知ってる
・外村さんはコツコツしてくれる
・板鳥さんに自宅のピアノを任せるのは申し訳ない
・いろいろな楽器の音合わせについて
・外村さんはチェンジ率が高いのはなぜか?
 →職人にも営業力、コミュニケーション力は必要か
・プロの仕事とは、あきらめないことか妥協することか
・音楽を題材とした映画は大概失敗している。「BECK」とか。
・素直な人は強い
・一番失敗したときに板鳥さんからハンマーをもらうシーンが良かった
・外村さんと一緒に成長したい

 この後雑談になり、それぞれの会員で意見交換を行いながら時間となりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

 次回29回福井読書会は、平成30年7月25日(水)19:00から21:00まで。
 会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

 取り上げる本は、芥川龍之介著「藪の中」と森見登美彦著「新釈走れメロス」に収録されている「藪の中」の二冊。読み比べてみたいと思います。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。
Effect_20180516_232342.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー
- | 次の10件 読書感想交換会 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。