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R2.1/29 第38回福井読書感想交換会レポート【筒井康隆著「時をかける少女」(角川文庫)】 [読書感想交換会]

 「星を読む会」主催、第38回福井読書感想交換会が令和2年1月29日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
 課題図書は、筒井康隆著「時をかける少女」(角川文庫)。

 ヤングアダルト向けSFの金字塔。
 色んなクリエーターに影響を与えた大ベストセラーを今一度読んでみました。
 さて、会員の皆様はどのように読まれたのでしょうか。

 また今回は飛び入りの方がお二人参加され、会に新しい風を呼び込んでくださいました。

 会は定刻過ぎに始まり、5分程で本書の振り返りを行い感想を述べる準備をしていただきました。
 それぞれ自己紹介と好きなジャンルを述べ3分で意見を発表、その後質疑応答に3分の時間を設けてました。

会員 1
 好きな作家は江戸川乱歩。
 筒井康隆の本ははじめて読んだ。細田守監督版の映画を見たばかり。その映画にも原作の主人公「芳山和子」が出ていた。
 本作では和子は「深町一夫」を忘れているが、映画版では30年たっても深町一夫を待ち続けており、差異が見られた。本作を読んでいて寂しく感じた。
 作品では深町の「また帰ってくる」という言葉があったが、帰ってきたかどうかが気になる。個人的には、二人がまた出会って恋に落ちてほしいと感じた。
 深町の優しさは、おこるべき事故を未然に防いで未来に帰ったところ。
会員 2
 月に4冊は本を読む。
 本作は自分から選んで読む本ではない。青春のライトノベルという感じ。高校生に戻って読む雰囲気か。
 高校時代に雑誌に掲載されていた。
 描かれている時代は、おおらかで懐かしく感じながら読んだ。高校当時は、ビートルズや「帰ってきたよっぱらい」が大ヒットした。
 経済的には右肩上がり、東京オリンピックの1、2年後、日本人全体がまじめに働けば明るい未来がある展望があった。

会員 3
 金沢在住で福井に寄る用事があり、たまたま読書感想交換会の情報を知り参加した。
 小説はほとんど読まない。
 本作が出版された当時は小学生だった。赤川次郎がヒットして世に出てきたのを覚えている。
 スムーズに読めた。
 タイムスリップが報道されたことを思い出した。

会員 4
 最近読書会の課題本しか読んでいない。大人ゲームにハマっている。
 筒井康隆は「旅のラゴス」を読んだことがある。途中合わずに読めなくなったが、本作は少年少女向けに書かれているためか読みやすかった。さーっと読めた。
 話言葉が独特で上品な感じがした。昔のドラえもんみたい。
 タイムスリップの力を使って冒険する話かと思いきや、力を持て余す主人公の葛藤が意外な話だった。

会員 5
 最近あまり本を読まなくなってきて、会で会員の方々からすすめられる本を読んでいる。
 本作は尾道三部作原作の一つとして有名な作品だが、読みながら「転校生」と勘違いをしていて、どこで主人公が入れ替わるかと勘違いをしながら読んでいた。
 映画「君の名は」の元祖だと感じた。当時としては革新的だったのではないか。
 筒井作品は他に「残像に口紅を」を読んだことがあるがすごく実験的な作品で、作家としてのスタイルが共感できるおもしろい作家だと思う。
 本書は、最初のミステリー部分は楽しく読めた。後半の恋愛部分は「学生特有のアレ」と感じた。惚れっぽさ?好きと言われたら意識してしまう唐突な感じ。もう少し丁寧な書き方をしてほしかった。

会員 6
 ノンフィクションばかり読んでいたが、最近は色んなものを読んでいる。最近読んだのは「ラストレター」
 本書は滑稽な話だと思った。いかがなものかと感じた。コメディのような雰囲気。歴史を変えちゃいけないと言いながら、自分が歴史を変えて去っていくケン・ソゴル。なんだかなぁ。
 タイムリープ物のカテゴライズについて。

会員 7
 読書会という物に初めて参加した。主にミステリー作品を読むことが多い。6~7割ミステリーなので、頭の中は死体だらけ。図書館をよく利用する。
 中学1年のときに本書を読んだ。自分が本好きになったきっかけの本。タイムリープ物は複雑で分かりにくいが、その複雑さに「大人」を感じて中高生が読んだんではないか、と感じた。
 今でも「ラベンダー」という単語を聞いたり匂いを嗅いだりすると、本書を思い出す。
 本書の読みやすさと比べると、最近の本は盛りすぎている気がする。古い版だと挿し絵も素敵に感じた。
 冒頭に盛り上がりが来るテンポの良さが心地よい。

会員 8
 古本を大量に買って積んどくのが趣味。東野圭吾、宮部みゆき、有川浩、池井戸潤を読む。好きなのは、重松清や浅田次郎。
 去年スポーツ物をよく読んだので、今年は戦国物を読みたいと思っている。
 昭和47年にテレビドラマ「タイムトラベラー」を一所懸命見た。話し言葉が話題になっているが、そう当時の人からすると背伸びをする話し方だった。
 中学生が学校の外で話すことなんてなかった時代。「好きだ」なんて言えなかった。
 現実にはありえない男の子女の子のやりとりがおもしろい。
 途中で終わってしまっていたので、丸々一冊続けばいいのに。

会員 9
 主催とおさなじみで、最近会に来られなかった幽霊部員。
 本書はすごく好きな作品。
 タイムトラベル物は好きで、アベンジャーズ、バタフライエフェクトなどの映画も大好き。成就しない恋愛も好き。
 本書の中でとても好きな点が3つある。
 「和子に平和な日が戻ってきたのである」という一文。平和な日とは、すべてを忘れてしまったということ。恋をしているときは平和ではない。切なくて良い。
 「ラベンダーの香り」。人間の記憶中枢は匂いを感じる部分と近い。
そのため、過去のことを思い出すきっかけとして「匂い」がある。筒井先生はそのことを知っていて書いたのだと思う。そこが好きな点。
 過去にしか行けない和子が、「いつかすてきな人が私の前に現れる気がする」と未来を見ている。物語の最初と最後に主人公が成長している話が好きなので、この部分も好きな点。

会員 10
 読書会の主催。ミステリーが好きだが、読書会のために色んな本を
読むことが多くなった。好きな作家は横溝正史、江戸川乱歩、眉村卓、夢枕獏、菊地秀行、田中芳樹。
 2019年11月に眉村卓先生が亡くなって同時代の匂いを感じたく、本書を選んだ。
 勘違いをしており長編だと思ったら中編程度の長さだった。色んな作品のモチーフになっており賛否が出やすい作品として選んだ。


 会員全員の感想、その感想についての質疑応答を終え、次に雑談形式で深化をはかりました。

●物語には「リアリティライン」がある。こんなもんやと思って読めるかどうか。許せる部分、許せない部分がある。
●日付が出てくるあたりでつっこみが激しくなった
 →つっこみたくなるのは読みこんでる証拠
●当時としてはその複雑さがうけた?
 →今ではタイムリープ物がたくさんある
 →メモとってまで読むことがなくなった
●理科の先生が真犯人かと思った
 →怒るばかりの先生が親身になってくれることがなかったことの裏返しか?
  →友達のような先生があこがれの先生
●多様性を認めなかった時代
 →逸脱を認めない、封建的な時代
  →それしか知らないから反発のしようがなかった
●「理科の先生」=「不思議なことへの検証」
●磁気テープは古い
●文体の古めかしさは読みづらさにつながらない
●章題のネタバレ感
 →昭和の感覚?匂わせ?ラベンダー的?
●誰も触れないずんぐりむっくりの朝倉悟郎
 →登場人物が少ないので読みやすい
●時をかける少女のドラマ
 →内田有紀のお母さん役が原田知世
  →「転校生」との勘違い
●カテゴリーとしてのジュヴナイル=ヤングアダルト=ラノベ?
●パプリカ
●やっぱり成就しない恋愛がいい
●純真な登場人物たち
●高校生より頭のいいケン・ソゴル
●2600年代未来人の磁気装置
 →睡眠学習が流行ったころの作品か?
  →スピードラーンニングみたいなもん
●ケン・ソゴルは栄養失調
●未来人の体格についての考察
●武田騎馬軍からハイセイコーについて
●巨人大鵬卵焼きハイセイコー
●ラベンダーで始まりラベンダーで終わる
 →ポプリ
  →ラベンダーの香りにときめきを感じる
   →流行りを取り入れる筒井康隆御大
●嗅覚は本能的な物?
 →プルースト現象について
●悪霊払いのはじめはファブリーズ
 →除菌=除霊
●多重人格探偵サイコにも出てくる匂いの場面
●収録されている他の作品の言及
●多重次元の存在
●眉村卓の「とらえられたスクールバス」
 →「戦国自衛隊」への流れ
●タイムスリップ物と呼んでいた頃
 →現状に満足できない人が異世界で輝く

今日のまとめ
「作品自体が時をかけた」


 最後少し雑談とし、本日はここで時間となり、読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

 次回39回福井読書感想交換会は、令和2年3月25日(水)19:00から。
 課題図書は、桑島かおり著「ことぶき酒店ご用聞き物語」(光文社キャラ文庫)を取り上げます。
 福井読書感想交換会の名物企画、ご当地作家作品の読書会。今回はあわら市在住の小説家、桑島かおりさんのあわら温泉街を舞台にしたファンタジー作品を取り上げます。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。

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