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第32回福井読書感想交換会のご案内 [ご案内]



32回福井読書感想交換会は、平成31年1月26日(土)19:00から21:00まで。会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

課題図書は、村上春樹著「東京奇譚集」(新潮文庫)より「ハナレイ・ベイ」を取り上げます。

10月19日より吉田羊さん主演の映画も上映されている、旬の課題図書。
飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。


東京奇譚集 (新潮文庫)

東京奇譚集 (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/11/28
  • メディア: 文庫



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H30 11/17 第31回福井読書感想交換会レポート(悟浄出立、悟浄出世) [読書感想交換会]

 「星を読む会」主催、第31回福井読書感想交換会は平成30年11月17日(土)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。初の土曜日開催です。
 今回の課題図書は、万城目学著「悟浄出立」、中島敦著「悟浄出世」の2作品でした。
  土曜日、女性陣は忙しいのか男ばかりの読書会となりましたが、紅一点が来たところで会の皆さんそれぞれの感想をお聞きしました。

1.悟浄出世、悟浄出立、悟浄歎異の順で読んだ。万城目学の出世では、三蔵法師から見た悟浄がいろいろ悩んでいて、出立で一歩踏み出すという印象。歎異でいろいろと動こうかなとなった。中嶋敦が書ききれなかった部分を万城目学が書いた、という印象が良かった。

2.「悟浄出立」から「悟浄出世」の順に読んだ。
 中嶋敦は文章中の格言に深みがある。
 万城目学は、文章の泉の深さが感じられず。出立から出世に至る経緯がわかったので深みを持たせられるのが、さらっと読めてしまったのがちょっと残念だった。もう一回読みたいのは中嶋敦版。中島敦がもっと長生きしていれば続きを書いていただろう、と思うと残念。

3.「悟浄歎異」が一番面白いと思った。悟浄の眼から見た人物評が描かれているが、「悟浄が問題を解決できる人」とは違うと思った。「悟浄出立」に相当する作品をかけたのに、早逝されたのが残念。


4.万城目学の方を先に読んだ。プリンセストヨトミを読んだことがある。この本の感想を言えと言われてもつまらない。
 中嶋敦を読んだら、難しいことが書いてあるが読みこんでいくと面白いなぁと思う。経過が大事だということが大切なところが読み比べるべき点かと思った。

5.中嶋敦版はあらすじを読んで辛いと思ったので読んでない。
 万城目学版を読んだ。万城目学版は悟浄から見た八戒、悟空の話。戦争は指揮官の精神を折ることだというところや、ラストで一行の先頭を悟浄が歩き、どうやって道を決めているのかと孫悟空に尋ねるシーンが共感できた。

6.万城目学版から読んだあとに、中嶋敦版を読んだ。あまりにも中嶋敦版が良かったので、「悟浄出立」の内容を忘れてしまった。
 「悟浄出世」の中で、人を食べていないはずの悟浄が、自分とは何かを考える病にかかるのが『「アルジャーノンに花束を」風に言えば』ご都合主義のような気がして引っかかった。しかし、悟浄が自分とは何かと悩みながら苦悩している姿に自分を重ねた。
 妖怪はあまり考えないものだが、人を食うことで自分とは何かを悩む病に侵されることがある。この病を人と妖怪という超人間的な存在を分ける境界として中嶋敦は描いた気がした。

7.「悟浄出世」、「悟浄出立」の順に読んだ。
沙悟浄が元神様だったのがびっくりした。
 猪八戒のイメージは「怠惰なブタ」だったので、天界で活躍した軍師だったとは思わなかった。
 西遊記に興味を持った

8.万城目学「悟浄出世」から読んだ。昔見たアニメのエピソードの一つくらいに感じた。
 読了感として、頭が良くなったかな?感が無かった。沙悟浄である必然性がなかったように感じる。キャラクターがあまり立っていないのでは?

 皆さんの感想のあとに、一般的な宗教者による西遊記の簡単な解説。

☆西方浄土:インドから見て西に極楽浄土があると言われている。東が「地獄」なのは太陽が地獄だから。 夕方から夜が一番良い時間。夕方から夜が一番良い時間帯だから。

☆三蔵:経蔵、律蔵、論蔵のことを指し、仏教の典籍の総称。または僧官の1つ。北周(556ー581年)に制定された。地方にも置かれる。三蔵に精通した人を指す言葉としても。

☆三蔵玄奘
 俗名、陳ネ韋(ちんい)
 629年に陸路でインドに向かい645年に教典657部・仏像を持って帰国
 大般若経(大般若波羅密多経)、般若心経(般若波羅密多心経)
西遊記の登場人物として、前世は釈迦の二番弟子「金蝉子こんぜんし」であったが説法を聴かず教えを軽んじたため、東土に転生した。

☆寒蝉敗柳に鳴き
  寒蝉 秋になく蝉、ひぐらし 勢いを失った様子を表す
  敗柳 枯れた柳 すでに色香が終わった様

☆天上界‐玉帝が住んでいる
☆霊霄殿‐玉帝の宮殿
☆玉帝‐高上玉皇大帝 中国道教の最高神 天界、宇宙、地上、地底の支配者

☆捲簾大将
 簾(すだれ)を捲(まく)る程、玉帝を近くで警備警護する大将
 近衛大将、近従、警視庁警備部部長

☆河伯‐河の妖怪
☆因果‐原因と結果。すべての行為は後の運命を決定するという業(カルマ)論
☆直綴‐じきとつ 法衣の一種
☆形而上学‐現像界の奥にある世界の根本原理を探求する学問

☆秦時の車度轢金賛
 秦の始皇帝を狙った張良の暗殺未遂事件?
 120斤(30kg)の鉄錐を巡幸中の始皇帝の車を狙って投げつけた暗殺未遂事件
 張良は後の劉邦の軍師となる人物

☆大椿の寿
 大椿之寿-長く生きることの例え
 大椿は伝説上の大木。大木の8000年を四季に例え、32000年を一年に例える。
  (出典:壮子)

☆朝菌の夭
朝菌は晦朔を知らず-朝生えて晩には枯れるキノコは晦日(みそか)と朔日(ついたち)を知らない。寿命の短い、はかない物の例え

☆大広袤‐広は東西、袤は南北の長さ。広さ、面積を表す
☆翻然大悟‐翻然-急に心を改める様
☆大活現前-大死一番、大活現前 死ぬ気になってかかればそこに道が開かれる(禅宗)
☆蘭麝 蘭の花と麝香の香り
☆瓔珞 宝石を連ねて編んだ飾り

☆頂に肉髻あり、円光
 仏の身体的特長を表す、三十二相八十種好の一つ。
 32の特長、80の微細な特長。
  *頂髻相(ちょうけいそう)ー頭頂の肉が盛り上がり髻(もとどり)の形をしている。
  *丈光相-体から一丈の光明を放っている。後光、光背、円光はこれを指す。
   それぞれ仏画、仏像を描くときの参考になっている。

☆托塔天王-毘沙門天(持国天、増長天、広目天と共に四天王の一尊で武神)
 水滸伝の晁蓋(ちょうがい)は托塔天王の転生とみる説もある

☆木叉恵岸-観音菩薩の弟子、ナタ太子の兄、西遊記に登場する人物

☆観世音菩薩摩「言可」薩-観音さん
 菩薩:仏、如来の次の位。自ら悟りを求める一方、衆生を導く行者
 菩薩薩摩「言可」薩:サンスクリット語でボーディーマハーサットヴァ
 般若経の用語、菩薩(覚りを求める衆生)+まかさつ(偉大な衆生)

●観音菩薩を表す語としての「観自在菩薩」は玄奘三蔵の訳。サン語でアヴァローキテーシュヴァラ「自由にみることができる」との意であり、訳語として正しいと鳩摩羅什(くまらじゅう)らの旧訳について、「観世音菩薩」を批判した。

☆夜叉-サン語でパーリ、薬叉とも。インドにおける鬼神の総称
 ケンダツバ:サン語でガンダルバ。帝釈天に仕える音楽神。お香(ガンダ)を食べて生きるとも。ケンタウロスとの関係も。

☆カルラ-インド神話の神鳥ガルーラ
☆キンナラ-インド神話の音楽の神々や精霊
☆マゴラカ-サン語でマホーラガー。マハー+ウラガで大いなる蛇を表す
☆(天竜)八部衆-インド神話における鬼神、戦闘神、音楽神、動物神が仏教に帰依し護法善神となった

☆みそなわす-「見る」の尊敬語。ご覧になる。
☆得度-覚りの世界に渡る(度)こと。出家して授戒すること。
☆梵音-サンスクリット語のこと。ここでは心地よい仏の言葉の音。
☆世尊-お釈迦さんのこと。
☆阿羅漢-サン語でアラハント。尊敬されるべき修行者。少林寺の修行僧
☆びゃく支仏-菩薩の下の位。声聞(しょうもん)の上の位の修行者。

☆正観を得れば浄業たちどころに成る
 正しい観方(覚り)ができれば業がたちまち清まる
☆心相るい劣ー心が弱く劣っていること
☆三途無量‐
 三途-三悪道「地獄、餓鬼、畜生」の苦しみの世界のこと。
 渡りやすく沈みやすいため、川にたとえられる

☆倫命-天子や天皇の命令。倫旨とも
☆大雷音寺-史実で玄奘三蔵が赴いたのはナーランダ大僧院

●香[けものへん+章]
 シカ科の動物、ジャコウジカ?
 [けものへん+章]の読みは「のろ」

●八百丈:2.4km 1丈=3.03m
●角宿:かくしゅく、かくしゅう。東 乙女座
●心宿:しんしゅく 和名、中子星。さそり座
●二十八宿:古代中国での赤道近くの正座の区分。28のエリアに不均等分割したもの。
●目に一丁字のない:ひとつの字も知らない、無学
●太上老君:老子が神格化されたもの。道教の最高神格の三清の一つ。道徳天尊、混元老君とも。
●八卦炉:太上老君が仙丹(仙人の薬)を練るときに使う
●泰山圧頂の法:三山で相手を押しつぶす法術
●泰山:山東省泰安市にある山。封禅(ほうぜん)-帝王が天と地に王の即位を知らせる儀式-を行う山、道教の五大聖山の一つ
●須弥山:サン語で「シュメール」「スメール」。古代インドの世界観で中心にそびえる山
●峨眉山:四川省にある山。芥川竜之介著「杜子春」にも名が見える。道教、仏教の聖山。
●小雷音寺の黄眉老仏-ミロク菩薩の元弟子「黄眉童子」。ミロク菩薩の宝物を持ち逃げしていた。
●金鐃:きんにょう。鈴。鳴り物
●釈迦如来:釈迦牟尼仏とも。釈迦、ゴータマ・シッダッタ、ガウタマ・シッダールタを仏(仏陀)として敬う呼び名。如来とは、如(真理)に従って来た者の意。サン語ではタターガタ。この上ない、と訳され「無上上」とも。大日如来、釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来など

●藕糸歩雲:藕糸は蓮の茎や根の繊維。蓮の糸
 歩雲履(ほうんり)は靴下と足袋が一緒になったような見栄えの靴。
 「藕糸歩雲の履」は北海黒竜王から奪った武具の一つ。

●鎖子黄金の甲:黄金でできた鎖帷子。
一万三千五百斤:8100kg 1斤=600g

●蟠桃会:すべての元凶。天界最高位の女仙「西王母」の誕生日会(3/3:陰の気が強くなる時期)。神仙が蟠桃(サターンピーチ、ドーナッツピーチを指す)を食すだけの会。
西王母の蟠桃園には3600本の桃の木があり、手前の1200本は3000年に一度熟しこれを食べると仙人になれる。中程の1200本は6000年に一度熟し食すと長生不老が得られる。奥の1200本は9000年に一度熟し食すと天地のあらん限り生きながらえることができる。
悟空はこの桃を複数個食べた。

●三十六員の雷将:三十六天将か?
道教において陽数の代表3と陰数の代表6の関係を多いに持つ数字36。3の倍数6を6でかけたもの(6の2乗)陰陽の代表である6と9の最小公倍数。兵法三十六計に始まり、三十六歌仙、富嶽三十六景、36協定など色々なところで登場する縁起の良い数字である。

●祐聖真君:玄天上帝、真武大帝、北極佑聖真君とも。七星剣を持ち、足下に亀と蛇をふみつける。

●迦葉(かしょう)-「十大弟子」の一人。釈迦の3番目の弟子。摩訶迦葉、大迦葉とも。頭陀(ずだ:煩悩を取り除くこと、またはそのための修行)第一と言われた。釈迦入滅後は教団をとりまとめた。

●阿難(あなん):「十大弟子」の一人。多聞第一と言われた。釈迦の従弟で、釈迦と教団に違反した悪人ダイバダッタの弟と言われる。

●東勝神州傲来国華果山:東の神州、海を越えた壮大なる「もの(台風、太陽)」が来る方角。
日本、琉球、台湾、フィリピンのどれか。
 孫悟空の出生の地。孫悟空は暴風雨に例えられたか?

●1里=3.927km 10万8千里=42万4千km
 80万里=320万km 30万里=120万km
 赤道一周=4万km

●斉天大聖到此一遊=天にも斉(ひと)しい大聖様がここに到って一遊び

●オンマニハツメイウン
 Om Mani Padme Hum オム・マニ・ペメ・フム
 おお、蓮華の中の宝珠よ
 マニ車にかかれている真言:六字大明呪
 観自在菩薩の慈悲を表した真言

●五行山:ベトナム ダナンにある。全体が大理石でできていてマーブル・マウンテンと呼ばれている。

☆東西南北で色が決まっている。北は黒、東は青、南は赤、西は白。道教思想より。

 簡単な道教の解説に始まり、孫悟空の出生地の話、桃太郎の話に及ぶに至り、会長の一人語りでほぼほぼ時間を使ってしまい感想の交換に到らなかったような気がします。反省しきり。
 本日はここで時間となり、読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。


 次回32回福井読書感想交換会は、平成31年1月26日(土)19:00から21:00まで。
 会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

 課題図書は、村上春樹著「東京奇譚集」(新潮文庫)より「ハナレイ・ベイ」を取り上げます。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。
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