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H30 5/17 第28回福井読書会レポート(羊と鋼の森)  [読書感想交換会]

 「星を読む会」主催、第28回読書感想交換会は平成30年5月17日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。

 今回の課題図書は、宮下奈都著「羊と鋼の森」。
 この作品は、2015年「キノベス!2016 第一位」、「王様のブランチ ブランチブックアワード2015大賞」、「第154回直木三十五賞」候補作、2016年「第13回本屋大賞」と名だたる賞の受賞歴があり万人が「面白い」と認めた作品と呼べるのではないでしょうか。
 知り合いの調律士から調律の勉強用に使うピアノのカットモデルを借りてきて、少々ピアノの基礎的な勉強をしてから、会の皆さん一人ずつから読後の感想をお聞きしました。

1さん
 宮下奈都の本は何冊か読んだ。一番感じたのは「空気感」。北海道を舞台にしているので寒さが伝わる。オススメのポイント。

2さん
 読後感としては、となりのトトロのような「悪い人が出てこない」「毒気がない」「俗っぽいところがない」雰囲気を感じた。さわやかな作品。
 読む分量もちょうどよくおもしろかった。
 本屋のサイン会で宮下奈都さんにお会いしたことがあり、小説家としての姿勢を主人公に投影しているように感じた。「あのまんまの方」。

3さん
 ちょっと難しかった。
 毒気がなく、さわやかで、キャラクターに悪い人がいないということはストーリーに波がないと感じた。読み進めるのが難しかった。
 繊細な表現が難しい。皆さんの感想を聴きたかった。
 最後「一万時間の…」が印象に残ってる。淡々としたストーリーの中で
奥行きを感じた。


4さん
 ピアノを表している、タイトルがよい。ピアノを羊と鋼でたとえることはすごいなぁ、と思った。
 大きな事件があるわけではない、日常が淡々と続くことが幸せ。
 人間が存在するためには、なにを幸せと思うか、自分が認められることが必要。「世界に許されている」という表現は、ピアノを調律することで世界とつながっていることを表していると感じた。
 多くの人は自分のことを認めてほしいと思って生きている。一人ではその「認めてほしい」という欲求は満たせない。
 世界と繋がることをテーマにしている良い作品と感じた。


5さん
 他会員から宮下奈都さんを勧められて読んでいる。宮下さんの書くキャラクターは自分に沈みすぎない。独白に近い書き方。重い文章になりがちな一人称が、そうならない書き方がしてある。
 気になる部分に付箋を貼ってある。「嫉妬はするより」主人公に深いバックボーンがなくさらって書いてある。
 起伏がないからこそ、いつでも読み返せるおもしろさがある。


6さん
 紹介されて読んでみたら大変面白かった。「起伏がない」という感想が多いが、自分の感情に入り易い文章の裏返しだと思う。
 自然の描写を詩的な書き方で書いてあるのが好き。
 Amazonのキンドルは後で振り返り易い機能があるので、読書の振り返りにはちょうど良い。
 キャラクターは作者の人格の一つだと思う。色んな宮下奈都がいる。

7さん
 宮下奈都作品は三冊目でどれも共鳴する部分があったが、この本は一番入りやすかった。
 自分の日常に縁のない職業、しかしそこにスポットライトを当てる慧眼。
 板鳥さんの調律でピアニストの夢をあきらめた秋野さんだが、そこで調律に魅せられる展開が良かった。板鳥と対照的な秋野さん。
 和音、由仁、外村の三人の関係がどうなるのか、もう少し見たかった。


8さん
 とてもさわやかで、透明感のある話だと思った。ゆっくりな成長ストーリーが良かった。主人公は先輩の話をメモして、できることをコツコツ、日々コツコツしている姿を働き始めた自分と比べながら読んでいた。
 事件やきっかけを境に成長するのではなく、日々のコツコツが成長させている。
 映画化が楽しみ。


9さん
 読んだ後に、和音ちゃんのピアノが聴いてみたいと思った。
 出てくる人たちがみんなすてきでさわやか。
 柳さんと外村くんとの会話が印象に残る。
 新聞配達の経験から、歩いているときにポストの位置が気になることがあったことを思い出した。

10さん
 宮下奈都作品ははじめて読んだ。さわやかで、実直で純粋な青年が一所懸命働いている。実際はゆがんでるが、小説だから脚色されている。
 作中出てくる原民喜の作品もすばらしい文章である。

11さん
 宮下奈都さんははじめて読んだ。きれいでさわやかな文章だと思う。
 原民喜の文章がよい。
 宮下奈都さんが主人公に似てるのではないか。
 「環境が変わる」ことよりも「環境が変わったことに気づく」ことの大事さを学んだ。
 これからの人生も考えたい。

12さん
 この作品で、ピアノの調律の奥深さを知った。
 小中学生向けに書いたような文体がつまらないと感じた。高校生が学校でピアノの調律を見ただけで調律師を目指すことや、双子の一人が調律師を目指すのは短絡的。
 主演女優がいない、主人公を支える存在がいない。
 本屋大賞でなかったら読んでいないと思う。

13さん
 ピアノの調律と自分の仕事が似ていると思った。最近ジレンマを抱えて仕事していたので、読んでいて泣けてきた。
 「あせらずコツコツと」という台詞から、代わってくれる誰かがいることが前提と考えた。代わってくれるだれかがいる幸せ。

 皆さんの感想のあとに、特に印象に残った箇所などについて話しました。

・先輩や後輩がいる職業と自分の代わりがいない職業
・自営業とサラリーマンの違い?
・調律の腕と営業の腕
・板鳥さんが飛行機に乗れていたら独立するのか?
・コンサート調律師なら飯食えるのか?
・武生国際音楽祭での調律師の動き
・作中のピアノメーカーは架空のもの
・作品の調律師の中で誰ならピアノを任せられるか?
・秋野さんなら、あきらめ、を知ってる
・外村さんはコツコツしてくれる
・板鳥さんに自宅のピアノを任せるのは申し訳ない
・いろいろな楽器の音合わせについて
・外村さんはチェンジ率が高いのはなぜか?
 →職人にも営業力、コミュニケーション力は必要か
・プロの仕事とは、あきらめないことか妥協することか
・音楽を題材とした映画は大概失敗している。「BECK」とか。
・素直な人は強い
・一番失敗したときに板鳥さんからハンマーをもらうシーンが良かった
・外村さんと一緒に成長したい

 この後雑談になり、それぞれの会員で意見交換を行いながら時間となりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

 次回29回福井読書会は、平成30年7月25日(水)19:00から21:00まで。
 会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

 取り上げる本は、芥川龍之介著「藪の中」と森見登美彦著「新釈走れメロス」に収録されている「藪の中」の二冊。読み比べてみたいと思います。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。
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