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H30 3/28 第27回福井読書会レポート(楽園のカンヴァス) [読書会]

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「星を読む会」主催、第27回読書会は平成30年3月28日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。
 新しい場所で行われる読書会。また、新たに加わった方や久しぶりの方も数名来られ、少し緊張の面もちで会が始まりました。

 今回の課題図書は、原田マハ著「楽園のカンヴァス」。
 ニホで行われる初めての読書会にふさわしい題材と思われます。美術ミステリーと紹介されることも多い、この名著を会の皆さんはどのように読んだのでしょうか。
 まずは会の皆さん一人ずつから、2分間の持ち時間で感想をお聞きしました。

1さん
 数年前に他の会員からすすめられて読んでみた。面白くて同じ作者の別作品「暗幕のゲル二カ」を読んだ。
 絵や芸術の価値は全く分からない。1億円の絵も他の人が観ると1円の価値もないものが芸術ではないか、と思っている。
 「真贋を決める行為」自体がよく分からなかった。偽者でも本物でも人の心をうつものならどちらでもかまわないと思った。
 ピカソの贋作ではないか、と持って行くオチはすごく面白かった。
 あらためて絵の価値とはなにか、と考えさせられた小説だった。

2さん
 美術芸術関係にうとく興味もないので絵の価値が分からない自分だが、この小説は、今まで読んだ中で1、2を争う面白い本だったのでびっくりした。
 作中に「bon voyage(よい旅を)」という言葉が何回も出てくるが、自分も当時を旅しているような雰囲気になった。当時の情景が感じられた。小説自体がみずみずしい。
 引き込まれて読み切った。
 絵にも興味が沸いたし、恋愛の続きも気になる。また読み直したいと思える小説。

3さん
 久しぶりに読書会に参加したが、課題図書に惹かれたのが大きな理由。元々「楽園のカンヴァス」を推薦したAさんのオススメを信頼していて、本屋で迷った時はAさんの選択を参考にしている。
 自分も絵画に造形が深くない。100人が100人とも感動する作品を『美しい』と言える。『美しい』の定義を考えたくなる本だった。
 絵画はすごくドラマティックなことが起こる芸術だなぁと思ったし、画家はぶっとんでるなぁと思った。

4さん
 絵の善し悪し、真贋は長い時間かけてその人の作品を見、何回も何回も見れば見分けられると思う。
 でかい嘘はだませる。
 80~90年頃、投機目的で買われた作品はどうなったかと考える。絵ではなく値段を買ったのではないか。

5さん
 皆さんと同じく、絵に興味がない。
 美術展に行っても、ああ教科書で見たことあるなぁ、という感想しかなかったが、この本を読んでどのように絵画を楽しむことができるのかを学んだ気がする。
 一つの絵を見て、作者がどの時代にどんなモデルを使ったのか。今後美術館に行っても、作品の背景を感じることができるかもしれない。

6さん
 美術が大好きで、県外にも絵を見に行く。作品は大変面白く読めた。
 本を読んで、ルソーの人物像やピカソとの交流がわかり驚いた。
 印象に残ったシーンは、織絵の娘が出てくる場面。高校生の美術に対する意識が、自分の高校生の頃の意識と比べて違うことが驚いた。父が美術家志望だったので、美術は身近な所にあった。
 ルソーの絵はオルセー美術館で観た。色んな作品を観た後で、印象に残っていたのが真っ黒な影のような人が立っている中で、白い目がランランと輝いているルソーの絵だった。

7さん
 美術全般に疎く、最初分かりづらかった。大原美術館に行ったこともあるが、覚えているのは「受胎告知」だけ。
 ルソーの画家の評価はわからないし、絵の評価も分からなかったので少し作品に入り込めなかったと思う。ルソーが最近認められた画家と分かったのが印象的。
 ピカソがカッコ良く描かれていて、台詞がいちいちカッコいい。ピカソが主役の続編があれば読んでみたい。

8さん
 絵は美術館などで観たことがなかった。
 織絵の会話から「絵の中に入り込む」感性で観ていることが分かり、それがわかりやすいように書き方が工夫されていると感じた。
 「キュレーター」とルビが振ってある箇所なども少しずつ変化があり、書き方に工夫されている箇所が分かり面白い。
 恋愛の場面では「ティムがんばれ」と応援してしまい、最後の笑顔は「夢」じゃなかったと感じた。


 皆さんの感想のあとに、特に印象に残った箇所などについて話しました。

・7日間という期限の中にいろいろな事件が起こる。一日毎に起こる。
・読み休み所が分からないほどスピードのある展開
・ハードカバーと文庫での違い
・絵の中で永遠に生きるという発想
・緻密な人が書いた作品のように感じる
・コンラート・バイラーが本当の作者という落ちが良かった。
・章ごとの書き手が変わった理由の考察あれこれ
・章の最後の頭文字について
・トムが現地に出てくるのは蛇足?トムは誰に呼ばれた?
・黒幕隠しの伏線。ティムの追い込まれ感がよい。
・ダヴィンチコードみたい!?
・女性が書いたと意識させる文体
・虚構と実際の出来事の境界線がはっきりしない
・ルソーの絵を見てもピンと来ない…
・現在のルソーの評価は?
・絵の価値はどのように決まる?
  →絵を商売にする人が稀少価値を見出す
・武生の有名な絵についての真贋詐欺事件についての見解
・ルソーは幸せだったのか?
 →描きたい絵はあるけどキャンバスも買えない
  →最後、自分の描きたい絵を描いた
・「楽園のカンヴァス」まとめサイトの便利さについて
・ピカソの「女性に慣れたしゃべり方」は気になった
・不参加会員から年表、感想の差し入れあり
 →かなりの力作を作ってしまうぐらい面白い小説だった
・各会員の美術についての思い出
・新聞社と美術館の関係。勉強になった。
・ツンツンしてた織絵さんが、急にデレたのがかわいい
・「どうした織絵?」
・最高の名誉を得た人がその世界から身を引くことができるのか。
・「お友達に会いに行く」という表現。原田マハさんにとっては美術は友達のよう。
・原田マハさんの他の作品、他美術関連本について情報交換。

 今日の名言大賞は、「男の人では書けない作品」です。
 ここまで細かく書かないといけないか、という出来事がきれいに最後並ぶ、といった伏線の回収の妙を称える感想が多かったこの作品を如実に表した的確な言葉ではないでしょうか。
 皆さんはどのようにこの作品を読まれましたか?

 本日はここで時間となり、1時間半の読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。


 次回28回福井読書会は、平成30年5月16日(水)19:00から21:00まで。
 会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。

 課題図書は、宮下奈都著「羊と鋼の森」。
 第154回直木三十五賞候補作、第13回本屋大賞受賞作品、福井が誇る女流文学作品をぜひご堪能ください。
 飛び入りも可能ですので、お気軽にご参加ください。
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