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11/29 第25回福井読書会レポート [読書会]

 「星を読む会」主催、第25回読書会は平成29年11月29日(水)午後7時から、福井市渕にあるよつばCafeで行われました。
 またまた飛び込みの方も来られ、少し緊張の面もちで会が始まりましたが…
 今回の課題図書は、岩井志麻子著「ぼっけえ、きょうてえ」。
 岡山がほこるスーパーホラー作家岩井志麻子先生の作品。第6回日本ホラー小説大賞受賞作。
 会員の方々はどのように読まれたでしょうか、まずは感想に耳を傾けてみます。

1さん
 作家の岩井志麻子さんはテレビのバラエティ番組で拝見した。猫の格好やすごい衣装だったので、不気味な小説書いてるとは思わなかった。
 語り口調の文体がすごくおもしろかった。普通の小説よりも不気味さが伝わった。
 オカルトやホラーが好きで、恐怖映像やネットの怖い話をよく見聞きするためこれを「怖い作品」とは思わなかったが、「不気味」「気持ち悪い」という印象が残った。


2さん
 二回は読んだ。若かったら「怖い話」と感じるかも。経験の差で怖さが違うのでは。
 裏付けがあると、もっと小説としておもしろさが引き立つのではないか。
 宮本常一「忘れられた日本人」に話が似ている。作者はこれを読んでいるのではないかと感じる。
 創作でも、裏付けがないと「おもしろい」と感じることはできない。


3さん
 岩井志麻子をバラエティで見て、こんな気持ち悪い本を書くんだ、という印象。
 読んだ感想は、人の命が軽く感じた。勝手に堕ろして勝手に河原に捨てた時代が本当にあったのかと。そこに怖さを感じた。


4さん
 岩井志麻子を知らなかった。テレビ見ないので。
 「怖い」より「気持ち悪い」という感想。4編の短編はそれぞれに、見た目の気持ち悪さがある。「ぼっけえ、きょうてえ」は頭の後ろの「姉」。
 後輩の女郎を殺す「欲の深さの気持ち悪さ」も怖い。人間の業の深さ。
 「怖い」にも種類がある


5さん
 岩井志麻子をタレントだと思ってた。小説を書いていると知って意外に思った。恋愛系の小説家だと思っていた。
 読んでて怖さを感じたのは、淡々と不幸な自分の生い立ちを語っていく「語り口」。お巡りさんに生まれて初めて優しくされ涙が出るという場面。
 すごく非人道的なことをしていても「人間的な弱み」を見せる所は印象的。


6さん
 前回の読書会の後にすぐ入手し読んだ。でも、一回読んだらもういいやと思った。内容的に読み返せない怖さ、水子殺し、お姉ちゃんにやられた。
 生まれた環境が悪かっただけでこうなる、という怖さ。


 皆さんの感想のあとに、特に印象に残った箇所などについて話しました。
・本に収録されている「密告函」が怖かった、よくできていた、おもしろかった
・表紙の絵が恐ろしい
・女の人らしい「怖さ」。男が読むのと女が読むのでは感じが違う?
・小泉八雲にも女性の怖さを伝える小説がある
・女性が女性を批判すると陰に籠もる恐怖がある
・「あまぞわい」は悲しい話に感じた
・家庭内では旦那にもよるかな?
・単純に「幽霊」が出てくるホラー
・興味がなかったら
・岡山の因習が強い(あくまでも感想です)
・貧しい時代の19世紀に思いを馳せる
・医学的には「二口女」はあり得る
・他の3編に比べれば「ぼっけえ、きょうてえ」は怖くない?

  話は他の短編に……
・男の「愛情」は、所有権争いでしかないのか?
・男はいつまで経っても「子供」
・「密告函」大人気
・旦那デスノートの話
・時代的には女性は所有物、甲斐性のある、食べさせてくれる男はいい男
・吉原は昭和30年代まで遊郭として機能していた話
・以前の課題本である泉鏡花の「高野聖」との対比
・福井読書会の課題本には女性が虐げられる作品が多い?
・県民性の話
・装丁の話、速見御舟の絵との関連性
・角川ホラー文庫でも甲斐庄楠音の絵は怖い


今日の名言大賞は、「この本の中は、男がダメなパターンが多い」です。岩井志麻子先生の作品を如実に表した的確な言葉ではないでしょうか。

皆さんはどのように読まれたのでしょうか。


 次に会員の皆さんに、「冬に読みたい一冊」「冬、雪がテーマの本」をオススメしてもらいました。


○アガサ・クリスティ著「オリエント急行殺人事件」
 厳寒の季節、国際列車オリエント急行は世界各国からの乗客でいつになく混んでいた。一癖も二癖もある乗客たちが作る異様な雰囲気のなか、雪で立往生した車内で、老富豪が刺殺された。名探偵ポアロが腰を上げたが、乗客のすべてには堅牢なアリバイがあった……大胆なトリックで贈る代表作。(amazonより抜粋)
 ミステリー好きとしては、冬・雪ときたら紹介せざるを得ない。せめてなりたやクリスティ。
 また映画も作られていますが、日本版ドラマもよかったですよ、とおすすめ。

○南木佳士著「ダイヤモンドダスト」
 火の山を望む高原の病院。そこで看護士の和夫は、様々な過去を背負う人々の死に立ち会ってゆく。病癒えず逝く者と見送る者、双方がほほえみの陰に最期の思いの丈を交わすとき、時間は結晶し、キラキラと輝き出す…。絶賛された芥川賞受賞作「ダイヤモンドダスト」の他、短篇三本。(amazonより抜粋)
 芥川賞受賞作。古い作品なのに、認知症やうつ病に対する対処法が現代の観点から見てもすばらしい。
 長野が舞台、冬の場面が多い。
 認知症のお父さんが「月を貸した振り込みはどうなった?」という言葉に対する場面が良かった。

○梶井基次郎著「冬の日」
短編小説。6章の断片的挿話から成る。結核の病状が顕著となり、血痰が長く続き始めた時期の焦燥と絶望感を、真冬に移り変わる季節の風景と共に描いた心象的作品である。タイトルは執筆当時に愛読していた松尾芭蕉の『芭蕉七部集』の一集『冬の日』から取られた。(Wikipediaより抜粋)
 とあるバンドがタイトルに使っていたことを覚えている。
 肺病に冒されているタカシが余命宣告をされ、健康な人と病んでる人を比べる
 「漆喰に落ちた血痰を金魚の子をつかむように」などの表現に惹かれる。


○クリフ・マクニッシュ著「レイチェルと滅びの呪文」
降る雪さえ黒い、暗黒の星イスレア。ここでは邪な魔法がすべてを支配する。魔女がつくりだした邪悪な生きもの、さらわれてきた子どもの奴隷たち、あらゆるものにこめられた呪文。はたしてレイチェルは、この星を救う伝説の「希望の子」なのか?異世界を舞台に、少女の冒険を壮大に描くファンタスティック・アドベンチャー。三部作の第一弾。(Googleブックスより抜粋)
 ファンタジー好きが異世界物をオススメします。冬と聞いたらこれしかありませんでした。何も考えずに読むことができます!思考停止したい時に読みます!
 ダレンシャンも好きです!

○偕成社刊「サンタクロースはいるんでしょうか?」
 サンタクロースって、いるんでしょうか?そんなしつもんに、ぴたりとこたえた人がいます。いまから90年ほどまえのアメリカのニューヨーク・サンというしんぶんにでた社説です。この本は、その社説を訳くしたものです。さあ、サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?(amazonより抜粋)
 子供のサンタクロースはいますか?の問いに新聞社が答えたもの。
 子供の頃に母にすすめられた。


○山本一成著『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』
 2017年4月1日――人工知能「ポナンザ」が現役の将棋名人に公式戦で初めて勝利した日を、その生みの親である著者は次のように振り返ります。(amazonより抜粋)
 AIがどのくらい本物かを知りたかった。冬・雪は関係ない。

○S・ツヴァイク著『チェスの話』
 ツヴァイクが亡命の途上で書いた最後の小説。ナチス圧制下ホテルに軟禁されたオーストリア貴族の心理を描いた、興味津々の名作。(amazonより抜粋)
 チェスの名人の話。冬・雪は関係ない。

 ちょうどここで時間となり、二時間の読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。

  第26回福井読書会は、2018年1月17日(水)午後7時から、よつばカフェで行います。
 新年早々課題図書は、新春恒例乱歩横溝出てこいや祭り!
 江戸川乱歩著「D坂の殺人事件」、そしてもう一冊江戸川乱歩著「押絵と旅する男」の2冊です。
 江戸川乱歩が愛した探偵明智の初出作品と、自己評価に厳しい乱歩先生が「私の短篇の中ではこれが一番無難だといってよいかも知れない」肯定的な言葉を残している最高傑作の誉れ高い幻想小説。
 乱歩先生の二面性を語りたいと思います。

 また、本との出会いをオススメする紹介本のお題は「春に読みたい、新入学生にオススメしたい一冊」です。
 お近くの方はお気軽にご参加ください。



オリエント急行の殺人 (新潮文庫 ク 3-4)




ダイヤモンドダスト (文春文庫)






檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1))

檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1))

  • 作者: 梶井 基次郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1954/04/25
  • メディア: 文庫






レイチェルと滅びの呪文





サンタクロースっているんでしょうか?

サンタクロースっているんでしょうか?

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2000/11/27
  • メディア: 単行本

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