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H31 3/27 第33回福井読書感想交換会レポート(暗幕のゲルニカ) [読書感想交換会]

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「星を読む会」主催、第33回福井読書感想交換会は平成31年3月27日(水)午後7時から、福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」で行われました。課題図書は、原田マハ著「暗幕のゲルニカ」。
 今回を最後に愛知県へ転勤になる会員から、お別れの挨拶で幕を開けた読書会。別れの季節に開かれた平成最後の読書会で、みなさんはどのように読まれたのでしょうか。


1.芸術の知識が少ない自分に、原田マハが美術館で働いた経験を基にした文章が勉強になった。表現力が豊かだと感じるが、「楽園のカンヴァス」の衝撃に比べるとそこまでではなかった。
 元キュレーターの書くピカソの絵画の解説はすばらしい。
 サンジェルマンデプレ教会近くのドゥ・マゴでのドラとピカソの衝撃の出会いを、google mapで場所や町並みの地図を検索しながら読んだ。
 ドラから見たピカソ、瑤子から見たピカソ。二人の女性のピカソへの視点がおもしろかった。
 説明がくどい箇所もあり、最後の結末をどう捕らえたらよいか分かりづらかったので、他の会員の方の意見を聞きたい。


2.ノンフィクションの様な小説と感じた。国連のタペストリーが隠された事実を下敷きにフィクションとして書かれたことに魅かれた。
 作品の中で「アートが世界におよぼす力」がしきりに語られていて、自分は半信半疑で読んでいたが、読後振り返って現在バンクシーの芸術作品が世界的に話題となっており色んな人に影響を与えるものだと改めて感じた。


3.欠席の会員が感想文を送ってくれたので、代読。「以前、他の会員のオススメで借りましたが、原田マハさんの描く世界観は、女性的で、ウェットな印象が強く、読んでいてどんどん疲れてくる感じがして、途中で読めなくなり、一度返してしまいました。今回は課題図書ということもあり、頑張って読みましたが、やっぱりニガテでした。
ピカソの作品も実は、青の時代以外、ニガテなことが多く、正直、ゲルニカも何が描いてあるのか分からなくて、意味不明な作品だと感じていましたが、今回、有名な『ゲルニカ』が生まれた背景や、ゲルニカ鑑賞のポイントが知れて、とても良かったです。
途中で、ピカソの華麗すぎる女性遍歴が気になって調べてみましたが、女性が変わると、作風が変わるなど、彼にとって、女性は「創作のミューズ」であるとともに、何だか使い捨てのコマのように感じました。
最初は強気だったドラが、後半になってくるとどんどん「ピカソに捨てられたらどうしよう」と思う描写が増えて来て、残念に感じました。ドラには、同じ女性として、男性に依存するのではなく、もっと精神的にも自立して、強く生きてほしい、と感じたし、逆にピカソを使い捨てにして、利用するぐらいの心意気を持ってほしいと感じました。でも彼女は、男性としてのピカソというよりも、ピカソの才能に惚れているように感じました。」


4.「楽園のカンヴァス」がおもしろかったので期待が高すぎた。最後が分かりづらかった。ルース・ロックフェラーの起死回生の一手が国連にゲルニカを掲げることの意味がうまく理解できなかった。
 読み込みが足りないのか、知識が不足しているのか、作家からのメッセージを受け取れなかったことが残念。


5.なぜ国連にゲルニカを飾ったかについて考察がある。芸術や表現とは、「内にある物を外に出す衝動」だと考える。ある時から外に出した物を人に伝えたいと願うようになる。
 ピカソはゲルニカだけ自分で名前をつけた。ピカソは、ゲルニカで初めてメッセージを込めた。ゲルニカがあるべき場所にあり見るべき人が見ないことには、ゲルニカはずっと暗幕がかかっているのと同じ状態であると思う。この小説の中ではあるべき場所とは国連であった。なぜなら、「ゲルニカは『私たち』のもの」で一つの国に収まる芸術作品ではなく、全世界の人に発したメッセージであるなら国連の一番目立つ所に掲げる必要があったからではないか。そのとき初めてゲルニカにかかっていた「暗幕」が取れたのではないか、と解釈した。
 過去と現代を行ったり来たりする書き方は読みづらかったが、シンクロ率が上がってきて読めるようになった。
 ドラと瑤子が主人公のように書かれているが、本当の主人公はゲルニカであり、ピカソである。ゲルニカはピカソそのものではないか。
 
 
5.ドラを中心に年表を作ってみた。ピカソには7人の恋人がいると言われている。それぞれの恋人により、ピカソは作風を変えている。
 ドラに本当に子供がいたかは不明。
 最後の鳩の絵は八神瑤子に渡り美術館に飾られるのではないか。
 ピカソの恋人で幸せになった人は一人もいない。


6.ピカソのこともゲルニカのこともよく知らないが、本を読んですごく勉強になった。
 現実に国連のゲルニカに暗幕がかけられたことがショックだった。
 フィクション、ノンフィクション入り交じっているが、細かい描写で説得力のある文章だと感じた。

7.楽園のカンヴァスの評判がよく、期待して暗幕のゲルニカを読んだが、それほど感銘を受けなかった。
 楽園のカンヴァスのルソーには好感が持てたし、共感できた。
 暗幕のゲルニカのピカソには共感できなかった。富も名誉も恋愛も自由なピカソ。
 絵画まわりの描写が原田マハさんの強み。親子関係の表現や描写が今後の原田マハさんの課題かと感じる。


8.ゲルニカや絵そのものはよく知らなかったので、絵画集でしっかり見てみた。プロジェクターで写した大きい絵で見てみたい。
 ワールド・トレード・センタービルの飛行機追突の番組をテレビで見て衝撃を受けた。
 空襲で罪もない人々が亡くなっていき、福井市も空襲でたくさんの方が亡くなっている。人間は愚かなことを続けている。
 緻密な筆致。
 ゲルニカにかけられた暗幕によりごまかし、導かれることは政治力の象徴として描かれていたように感じる。
 世界の指導者には人間の文化を愛おしむ気持ちを持っていただかないと、同じ愚かな行為を繰り返す。


 一通り読後の感想をお聞きし、それらを基にブレーンストーミングで新たな見解が出ないか探ってみました。

●ドラは最初から弱い女だったが、ピカソに必死に追いつこうとしていたのではないか。強い女とは?
●画集を元に「馬の肛門」の確認
  →でっちあげ→でっちあげと分かるぐらいの言い訳
●アメリカが作ったストーリーにはゲルニカが都合が悪かった
●ゲルニカを消したのは、「戦争を肯定する人々すべて」
 →ピカソのメッセージを受け取らない、受け取れない人の目には暗幕がかかっている
●世界平和を願った人が目の前の女性のケンカを止めないのはなぜか
 →戦争と比べると、女性のケンカはピカソにとって愛すべきもの?
●アメリカの大統領がスピーチの中で話す「神」
 →godとjesusの違いは旧約聖書の神とイエス・キリストの違い?
●キリストの名の下に戦争をしかけるのは十字軍になってしまう
●国連からゲルニカが消えたことを世界の人は気づいたのか?
 →日本では放送されたのか?
●芸術・音楽のはじめについて
 →共感を求めるようになる
●パルド・イグナシオが、「牛の涙」を遙子に渡したことの意義
 →元々涙がなかったのか?
   →ドラの写真には載ってる?
     →涙の重要性とは。何かの象徴?
       →ピカソのいたずら心→パルドからの贈り物
●簡単にテロリストに捕まるのか?
●現状のカタルニアについて
●女性を引きつけるピカソの魅力
 →ピカソの華麗なる女性遍歴を年表を基に確認
●ルースの秘策とは国連に絵を掲げることだった?
 →「国と国とをつなぐこと」
  →パルドに「ピカソはどう思っているか」と突きつけること
●芸術は飾りではない。敵に立ち向かうための武器。
●原田マハさんの狙いが「絵を見てもらう」ことだとしたら大成功
●アートにも見せ方がある
●鳩の絵-ピカソが描いたことで「鳩=平和」のイメージがついた
 →旧約聖書にも大地を発見した鳥として描かれている


 本日はここで時間となり、読書会お開きとなりました。参加された会員の皆様、お疲れさまでした。


 次回34回福井読書感想交換会は、令和元年5月29日(水)19:00から21:00まで。会場は福井県立美術館横「美術館喫茶室ニホ」です。
 次回は、「喫茶室ニホ借りて一周年記念特別大会 宮沢賢治作品プレゼンバトル」を開催します。
 ニホのマスターが好きな宮沢賢治。宮沢賢治作品や関連作品(解説書、詩集、モチーフ作品など)を3~5分でプレゼンを行い、どの本やタイトルを読みたくなったかを決めたいと思います。
 聴衆役のご参加もお待ちしておりますので、飛び入りの方含めお気軽にご参加ください。
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